大竹 伸明Nobuaki Otake
PwCコンサルティング合同会社
代表執行役 CEO
奥田 直彦 氏Naohiko Okuda
内閣官房
情報通信技術(IT)総合戦略室 参事官
下村 堅二 氏Kenji Shimomura
JA西三河きゅうり部会
改革プロジェクトサブリーダー
宮田 裕章 氏Hiroaki Miyata
慶應義塾大学 医学部
教授
矢田 明子 氏Akiko Yata
Community Nurse Company 株式会社
代表取締役
久保田 正崇Masataka Kubota
PwCあらた有限責任監査法人
執行役副代表

2021年09月17日

DX

「独占」から「持ち寄り」へ
社会的利益としてのイノベーション
──グローバル メガトレンド フォーラム 2021より

企業が価値を提供する対象として意識すべきステークホルダーは、今や顧客や株主、従業員にとどまらない。そこにより大きな対象としての「社会」が加わり、企業は利益を追求するだけではなく、社会により良い影響を与える存在であることが求められている。では、ビジネスやテクノロジーはどのように社会に利益をもたらすことができるのだろうか。「社会的利益としてのイノベーション」と題した本セッションでは、PwCコンサルティング合同会社代表執行役 CEOの大竹伸明がモデレーターを務め、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室参事官(イベント開催当時。現デジタル庁参事官)の奥田直彦氏、JA西三河きゅうり部会改革プロジェクトサブリーダーの下村堅二氏、慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏、Community Nurse Company 株式会社代表取締役の矢田明子氏、PwCあらた有限責任監査法人執行役副代表の久保田正崇をパネリストに、産官学それぞれの分野での取り組みを紹介してもらいながら、これからの社会に必要なイノベーションのあるべき形を模索した。

目次

イノベーションをもたらす取り組みが広がっている

本セッションに登壇したパネリストたちは、どのような社会課題の解決を目指して、日々奮闘しているのか。初めに、モデレーターを務めるPwCコンサルティングの大竹伸明が、各界からの多彩なパネリストに、現在取り組んでいる活動について聞いた。

PwCコンサルティング合同会社 代表執行役 CEO 大竹伸明

2021年9月のデジタル庁発足に向けた準備に取り組んだ内閣官房の奥田直彦氏は、デジタル庁の役割について以下のように語った。「データ利活用の基盤を作り、利便性や幸福を実感できる社会を実現することで、誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化を目指しています」(奥田氏)

内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 参事官 奥田直彦氏

「医療分野の知見がコミュニティ内で気軽に得られるようになれば、より健康で生き生きとした社会が実現できるはず」と考えて活動するのは、Community Nurse Companyの矢田明子氏である。矢田氏は、地域コミュニティの中で住民の健康を気づかう「おせっかい役」が、自身が持つ知識や技術を活用し、健やかで楽しい生活をサポートする「コミュニティナース」という新たなアプローチを提唱し、普及に努めている。「一般の人の身近な存在として、心身の健康について気付きを与え、力を引き出せるような仕組みづくりに挑戦しています」(矢田氏)。住民からの共感が社会に利益をもたらす仕組み作りの原動力となっており、「感謝の言葉を口にしてくれる人がいることで、取り組みを広げることができました」と矢田氏は語る。

Community Nurse Company株式会社 代表取締役 矢田明子氏

40軒の農家が手を組んでスマート農業に取り組むJA西三河きゅうり部会改革プロジェクトでサブリーダーを務める下村堅二氏は、きゅうり栽培にテクノロジーを導入している。「栽培状況に関するデータをリアルタイムで共有し、分析することで栽培技術を高め、収穫量アップに生かしています」(下村氏)

JA西三河きゅうり部会 改革プロジェクトサブリーダー 下村堅二氏

今、避けては通れないテーマである新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と向き合っている専門家にもご参加いただいた。データサイエンティストで慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏は、「不確実性の時代が到来したことを世界が認識しました。時系列で前提が変化し、シンプルな最善戦略がない中で、データやテクノロジーで現実を把握しながら最善を皆さんと考え続ける取り組みをしています」と説明した。

慶應義塾大学医学部 教授 宮田裕章氏

PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)の久保田正崇は、監査にAIを取り入れたAI監査研究所の設立者である。「実は監査の手法は一子相伝のようなものでしたが、すでにあるデータをいったん紙に落とすという監査工程の非効率性を解消する手法を自分たちで開発し、プロセスをデジタル化することができました。目下、AIを活用して膨大なデータからエラーを発見するチェック手法も導入しています。こうしたデジタル化にはデータの共有が不可欠であり、クライアントをはじめとした企業との連携が欠かせません」(久保田)

PwCあらた有限責任監査法人 執行役副代表 久保田正崇

脱「一子相伝」が変革を実現する

社会に新たな利益をもたらすべく活動を続けるパネリストたちは、困難をどのように克服してきたのか。また、目の前にある困難をどのようにして克服しようとしているのか。

久保田が用いた「一子相伝」というキーワードに多くの登壇者が反応した。スマート農業に取り組む下村氏によると、農家は自分の技術を他人に教えないのが当たり前だったという。データの共有はその真逆に位置する行動である。農業の常識を覆し、連帯を実現したその態度変容に秘訣はあるのか。「保守的で、変化を嫌いがちな農家の方が多いのは確かです。だからこそ、変わればうまくいくという成功事例を見せ、データの共有が農業の不安定さの解消につながるのだと共感してもらうことが大切。ともに取り組む仲間を最後まで見捨てない姿勢も重要です」(下村氏)。また、省庁も情報を囲い込む傾向が強く、互いに競争関係になりがちだという。内閣官房の奥田氏は、「デジタル庁は各省と一緒に走りながら取り組みを進め、競って同じゴールを目指す、“競争”ではなく“競走”のスタンスが大事だと考えています」と縦割り打破に向けた意気込みを語った。

PwCあらたの久保田が腐心したのは、デジタルに対する法人内のマインドセットを変えることだったといい、「変革をリードする担当者を法人内に立て、役員を含む全員に同じデジタル研修を実施しました。皆で一斉に同じ課題をやると、競うようになります。こうした施策を経て、デジタル化が当たり前だという意識が法人内に根付いていきました」と振り返った。

最善の戦略が刻々と変わる不確実な時代において、COVID-19対策に向き合う宮田氏からは、データサイエンティストがデジタルを活用するコツについての示唆があった。「AIを活用するというだけでは失敗する可能性が高いです。社会における気付きやカスタマーインサイトを把握した上で、データを使いながら現状を分析し、アルゴリズムに落としていくという、マネージメントデザインが不可欠です」(宮田氏)

グローバル メガトレンド フォーラム 2021の様子
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奥田 直彦 氏の写真
奥田 直彦 氏Naohiko Okuda

内閣官房
情報通信技術(IT)総合戦略室 参事官(イベント開催当時)

徳島県出身。東京大学教養学部卒業後、1994年に総務庁入庁。統計局総務課調査官、統計情報システム課長、行政管理局管理官などを経て、2016年より内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 参事官。2021年9月よりデジタル庁参事官。

下村 堅二 氏の写真
下村 堅二 氏Kenji Shimomura

JA西三河きゅうり部会
改革プロジェクトサブリーダー

東京理科大学大学院修了後、製造設備の生産技術エンジニアを経て、出身地の愛知県西尾市に戻り農業を始める。エンジニアとしての経験を生かし、JA西三河きゅうり部会で選果機の企画設計をリードしたことをきっかけに改革プロジェクトのメンバーとなり、スマート農業の推進を牽引している。

宮田 裕章 氏の写真
宮田 裕章 氏Hiroaki Miyata

慶應義塾大学 医学部
教授

東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)。データサイエンス、科学方法論を専門とし、科学を駆使し社会変革を目指す研究を行う。厚生労働省「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」委員を務めたほか、NCD(National Clinical Database)の構築なども手掛ける。

矢田 明子 氏の写真
矢田 明子 氏Akiko Yata

Community Nurse Company 株式会社
代表取締役

島根県雲南市が主催する地域課題解決人材育成事業(幸雲南塾1期:2011年〜)で地域に飛び出す医療人材によるコミュニティづくりを提案(2016年総務大臣賞、プラチナ大賞受賞)。その後、医療人材を含むまちづくり人材を体系的に育成するプログラムが2013年より東京大学医学部のサマープログラムに認定される。2016年よりコミュニティナース育成プロジェクトを立ち上げ、2017年に法人化。看護師。保健師。

久保田 正崇の写真
久保田 正崇Masataka Kubota

PwCあらた有限責任監査法人
執行役副代表

1997年青山監査法人入所。2002~2004年までPwC米国シカゴ事務所に駐在し、現地に進出している日系企業に対する監査、ならびに会計・内部統制・コンプライアンスに関わるアドバイザリー業務を経験。帰国後、2006年にあらた監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)に入所。国内外の企業に対し、特に海外子会社との連携に関わる会計、内部統制、組織再編、開示体制の整備、コンプライアンスなどに関する監査および多岐にわたるアドバイザリーサービスを得意とする。2019年9月に執行役専務(アシュアランスリーダー/監査変革担当)に就任。監査業務変革部長、会計監査にAIを取り入れ監査品質の向上や業務効率化を目指すAI監査研究所副所長を兼任。

大竹 伸明の写真
大竹 伸明Nobuaki Otake

PwCコンサルティング合同会社
代表執行役 CEO

外資コンサルティング会社および外資IT系コンサルティング会社を経て、現職。
自動車メーカーおよび自動車部品メーカーを中心とした製造業や、総合商社を得意産業とし、戦略策定支援から業務変革(バックオフィス、フロントオフィス系業務)、IT実装(ERP導入経験を多数、クラウド導入)、PMO案件まで、さまざまなプロジェクトに従事。会計管理領域、販売管理領域、設計開発領域に強みを持ち、海外案件、クロスボーダー案件など、国際色の強いプロジェクトの経験を多く有する。

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