木村 浩一郎Koichiro Kimura
PwC Japan グループ代表

2021年03月10日

リーダーシップ

米中対立の間で日本企業が直面する
サイバーセキュリティのリスクとは
――GZERO SUMMIT 2020より

2020年12月9~11日にオンラインで開催されたユーラシア・グループ主催の「GZERO SUMMIT 2020」。2日目に行われたジオ・テクノロジーをテーマとしたVIPラウンドテーブルでは、PwC Japanグループ代表 木村浩一郎が製造業やメディア各社からの登壇者とともに、テクノロジー分野における米中のデカップリング(切り離し)が進む中で企業がさまざまな経営課題にどう取り組んでいくべきかを議論した。

目次

米中両国とのつながりが日本にリスクをもたらす

ラウンドテーブルの最初の登壇者として、木村は地政学リスクを踏まえたサイバーセキュリティの観点から日本企業への提言を行った。

木村はまず米中のデカップリングの現状を俯瞰(ふかん)し、米国が経済繁栄ネットワーク構想や5Gクリーンネットワークイニシアチブといった取り組みと輸出管理規則の厳格化によって同盟国の合意形成を強化する一方で、中国は「中国製造2025」や「国家情報法」などの政策を通じ、米国の技術からの「自立」を目指していると概括した。

その上で、「中国にとって重要なのは、軍民両用(デュアルユース)技術の知的財産と自国生産能力」だと強調。新インフラと新エネルギーに焦点を当てた「中国標準2035」に向けて、デジタル主権を通じた世界標準を目指す取り組みを加速させるだろうと述べた。

こうした地政学的環境のもと、日本企業にとってサイバーセキュリティ上のリスクはどこにあるのか。木村はサイバー攻撃の標的となりやすく人材流出も懸念される分野として、知的財産の重要性が高い衛星関連、ソナー、センサー、リモートセンシング、ロボット技術、充電技術、新材料などを挙げる。加えて、米中のデカップリングの中での日本の位置づけについて「日本は中国からも米国からも切り離すことはできないと想定する必要があります。双方のサプライチェーンやテクノロジーに深く組み込まれているからです」と指摘した。米中両国の市場とサプライチェーンが交わる場所にある日本は、双方からのサイバー攻撃やサイバースパイ活動の対象になり得ると警鐘を鳴らす。

GZERO SUMMIT 2020の様子

官民連携とインテリジェンス機能の強化が急務

このようなリスクに直面しながらも、諜報機関を持たない日本はインテリジェンス機能に課題を抱えている。米ハーバードケネディスクールのベルファーセンターが国家のサイバーセキュリティ機能を調査した「National Cyber Power Index 2020」で、日本は9位にランクインしたものの、インテリジェンス機能の向上にはさらなる注力が必要であることが指摘されている。一方、米中ではサイバーセキュリティが軍事産業と密接に連携しながら高度化しているほか、同調査では調査対象のうち21カ国がサイバー諜報活動を自国の軍隊・諜報機関あるいは他国の諜報機関を通じて実施していると認めている。

これを踏まえ、国家レベルのサイバー活動は一企業で太刀打ちできるものではないため、「官民での連携が必要不可欠」と木村は述べる。その中で企業が取り得る対策の1つとして挙げられるのが、米国の当局や主要な企業から上級管理職を迎え入れることだ。それにより、米国当局を含むインテリジェンスコミュニティとの関係性が築きやすくなるといえる。また、企業各社が脅威情報の分析能力を向上することも求められる。先述したように、ソナー、センサー、リモートセンシング、ロボット技術、充電技術、新材料といった軍事目的とは見なされないような技術も、サイバー攻撃の標的となるリスクがある。そのため産業界全体での対策が急務となることを強調し、木村は提言を締めくくった。

木村 浩一郎の写真
木村 浩一郎Koichiro Kimura

PwC Japan グループ代表

1963年生まれ。1986年青山監査法人に入所し、プライスウォーターハウス米国法人シカゴ事務所への出向を経て、2000年には中央青山監査法人の代表社員に就任。2016年7月よりPwC Japanグループ代表、2019年7月よりPwCアジアパシフィック バイスチェアマンも務める。

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