Inside the Mind of the CEO Stephen A. Schwarzman Chairman, CEO & Co-FounderBlackstone Group
スティーブン・A・シュワルツマン 氏Stephen A. Schwarzman
ブラックストーン・グループ 会長、CEO、共同創業者

2020年08月17日

Inside the Mind of the CEO

後編ブラックストーン創業者スティーブン・A・シュワルツマン氏が語る 失敗するのは「人」ではなく「案件」──オープンな意思決定と強い信念で経営と社会課題に向き合う

本記事は、PwCグローバルネットワークのメンバーファーム数社で発行する「strategy+business」(2020年夏号)に掲載された記事の抄訳です。原文はこちらからご覧ください(※)。

インタビュアー:ダニエル・グロス(「strategy+business」編集長)、ニール・ダール(PwC米国 フィナンシャル・サービス・インダストリー部門リーダー)
執筆:ダニエル・グロス
写真:ブラックストーン・グループ提供

インタビューシリーズ「Inside the Mind of the CEO」では、世界各国の企業のCEOにお話をうかがい、不確実性の時代にCEOが重要な意思決定にどう向き合っているのかを探っていきます。
PwCが世界のCEOを対象に実施している「世界CEO意識調査」もあわせてご参照ください。

世界最大規模の資産運用会社、ブラックストーン・グループの共同創業者兼CEO、スティーブン・シュワルツマン氏のインタビュー後編では、新規ディールの提案を議論するユニークな仕組みや、個人として取り組むフィランソロピー活動について聞きます。

徹底的にオープンな議論でリスクを低減

──著書では、初期のあるディールの失敗経験から、全てのシニアパートナーを巻き込んだ民主的かつオープンな意思決定を行う必要性を学んだと書かれています。そして、全てのディールに全員が意見を言うよう求めたそうですね。その理由を教えてください。

シュワルツマン:基本的に会議に出席しているからには、何か貢献すべきです。給与を払って聞き手を雇うつもりはないというのが私の考えです。ただオフィスに座り、他の社員が働くのを眺めていることに意味はありません。ここにいるのは仕事をするためです。仕事をするとは、例えば何かを評価する場合に自分なりの意見を持ち、それを伝えることです。それにより全員が学び合えるからです。

私がもっと賢く才能に恵まれていれば、他人を必要とせずやっていけるでしょう。ウォーレン・バフェットのように小規模のファンドを運用すればよいのです。たまたま私にはそれほどの才能がありませんでした。そこで、それを補うために頭脳明晰な人材を見出し、彼らを束ね、詳細な提案書を渡し、十分な時間を与えてそれを読んでもらい、社内の提案者との会議に出席させるのです。

これはリスク評価を行うタイプの会議なので、リスクの内容に関する自分なりの意見を持っていることが必要です。提案したチームが主要変数のそれぞれについてマイナスの結果が起こる確率を正しくとらえているか、また各変数のマイナス影響は最悪でどの程度か、さらに、複数の変数が同時に悪化する確率はどの程度か──。彼らの仕事は、事前に考えをまとめ、その結果を会議の場で伝えることです。

本当に優秀な社員を8人集めてこうした議論をすれば、起こり得るほとんど全てのリスクを把握できるのです。1つの変数がマイナスに作用した場合の影響の大きさは、予測した人により異なります。これは重要な議論です。中にはそうした変数に気づいていない場合もありますから。

そこから新たに一連の議論が起こり、さらに別の疑問が生まれます。提案チームのメンバーは問題を持ち帰り、出された疑問に答え、その答えを文書化しなくてはなりません。これが3回繰り返されることもあります。その結果、このプロセスを終えた段階では、指摘されなかった問題がその後に深刻化して投資家の資本を大きなリスクにさらす結果になる確率は、きわめて低くなっています。

──そのプロセスは、コンセンサスを強力に促し、全員に当事者意識を持たせることにもなりそうですね。

シュワルツマン:このプロセスがあれば、ディールを提案するチームに伸び伸びと仕事をしてもらうことができます。通常の組織では、ディールを企画する社員は、自分の仕事は他の社員を説得して動かすことだと感じています。そのために、きわめて奇妙なインセンティブが生まれます。仮にディールが失敗すれば提案者が責められるからです。しかし当社では、提案をとことん議論しつくす段階で、意思決定から個人の色が消えてしまいます。議論の相手が誰か、ディールの提案者が誰かが問題ではなく、重要なのは提案それ自体だと考えるようになります。

失敗するのは「人」ではなく「案件」です。失敗すれば提案者も、会社も、他の社員も同じように困るのだから、困らないように努力すればよいのです。失敗の約8~9割は、自分たちで評価した変数が原因です。グループとして誤った評価を下したのであれば、提案者が責任を問われる理由はありません。このように、リスクを避けて通れない仕事に携わる社員を支えるような環境を、社内に構築するのです。

フィランソロピーの原動力は個人の想い

──今日のマネジメント思考の多くがマインドフルネスや“letting go”(執着心を捨てること)、よりよい睡眠に注目しているのと対照的に、あなたの著書では、心配することは実は有益で、あなたの経営哲学の重要な部分だと述べられています。

シュワルツマン:まあ、心配ばかりしていると気楽な人生は送れませんがね。私は常に考え事をしています。心配の種を、会社にとってダメージの大きい順に、日々並べ替えているのです。また、「当社にとって可能性のある素晴らしい事業のうち、まだ手を着けていないことは何だろう」というのも心配の1つです。他社がそれを実行したら、先を越されてしまいますから。

──気候変動や森林火災についても心配しているのですか? あるいは、投資先企業の1つに債券の償還期限が近づいているとか? この部屋に入る直前には何を心配していましたか。

シュワルツマン:私の心配事には、小さなものもあれば非常に大きな問題もあります。例えば現在の米国社会の分断が今後どうなるか心配ですし、人々の怒りや、その結果米国が道を踏み外し、惨憺たる結果につながることも心配です。これは米国内だけでなく、世界的な現象です。深刻な社会問題も多々あり、私たちの企業活動に影響を与えています。個人的には、そのうちのいくつかの問題に対し、ささやかなフィランソロピー活動で貢献することになりました。

──次にそのお話をうかがうつもりでした。あなたは非常に大がかりなフィランソロピーに次々と資金を投じ、中国、人工知能(AI)など大きなテーマに関与しています。こうした活動を支えるあなたの哲学について教えてください。

シュワルツマン:私は何かが問題だと感じるとたいてい、行動を起こそうとします。貢献できることがあるからです。金融危機が去った10年前、私は中国について懸念していました。全世界ではないとしても、少なくとも米国内では、中国がポピュリズムの攻撃対象になることは容易に予想がつきました。これは興味深い問題です。中国側にも学ぶべき点はありましたが、同時に世界各地の一部の人々によって誤ったイメージを植え付けられてもいたのです。

そこで思いついたのが、シュワルツマン奨学金(世界各国の学生を1年間中国に留学させる奨学金プログラム)です。オックスフォード大学のローズ奨学金と同様に、世界から広く優秀な学生を募集し、北京に送り出しました。

AIについて知ったのは5年ほど前、ジャック・マー氏(アリババグループの創業者)から話を聞いた時です。著名なIT企業の複数の経営者が、今後はAIによってさまざまなタイプの成果が──社会にとって非常にマイナスなものから大きく貢献するものまで――生まれるだろうと考えていることを知りました。そこで私はAI分野に関与するようになり、2件の大規模なプロジェクトに寄与しました。マサチューセッツ工科大学(MIT)ではAIに関連する技術的・社会的問題の両方についての研究を推進するシュワルツマン・カレッジ・オブ・コンピューティングを、オックスフォード大学ではAI倫理研究所(Institute for Ethics in AI)を創設しました。

──こうした活動の手段として、個人的なフィランソロピーとブラックストーンをどう区別していこうと考えていますか。昨今では、特にIT業界だけでなく金融業界でも、経営者が自社のビジネスと気候変動などの社会課題の解決を直接的に結びつけています。

シュワルツマン:直接結びつくものとは考えていません。ブラックストーンには、さまざまな顧客の資金を運用して成果を上げるという主たる目的があります。それが、当社がビジネスを行う第一の理由です。

もちろん、他にステークホルダーがいないわけではありません。しかし私は、今お話ししたような活動に個人で10億米ドル以上を投じてきました。こうした資金をブラックストーンとしてMITやオックスフォード大学のAI倫理プログラムに提供することは適切でないと考えています。シュワルツマン奨学金をブラックストーンのプロジェクトとすべきだとは思いません。私的なフィランソロピー活動だからです。こうした活動から、いかなる形でもブラックストーンに利益をもたらすつもりはありません。

私は、例えば世界平和のような、社会や世界全体に影響を及ぼす問題に取り組もうとしています。感傷的で大げさに聞こえるかもしれませんが、それが私の目指していることなのです。ですから、フィランソロピーとして私的に関わるべきだと考える活動をブラックストーンの事業と切り離して考えるのは、決して難しいことではありません。

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ブラックストーン創業者スティーブン・A・シュワルツマン氏が語る【前編】「社員は家族」──全従業員が同じ理念を共有し、イノベーションを生み出す社内コミュニケーションと人材活用の秘訣

※strategy+business からの転載記事はPwCネットワークのメンバーファームの見解を示すものではなく、記事中での出版物・製品・サービスへの言及には推奨の意図はありません。

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