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木村 浩一郎Koichiro Kimura
PwC Japan グループ代表
ブレア・シェパードBlair Sheppard
PwC Global Leader, Strategy and Leadership Development
瀧島 勇樹 氏Yuki Takishima
経済産業省 商務情報政策局
情報技術利用促進課長
迫田 雷蔵 氏Raizo Sakota
株式会社日立アカデミー
代表取締役社長

2020年06月22日

デジタルトランスフォーメーションを成功に導き、デジタル化時代を生き抜くためのアップスキリング ──PwC グローバル メガトレンド フォーラム 2020より

DXを分解・再定義する日立グループの取り組み

続いて「日本企業のチャレンジ」というテーマのディスカッションでは、株式会社日立アカデミー 代表取締役社長の迫田雷蔵氏が登壇し、日立グループにおけるDXとその実現を支えるアップスキリングの取り組みを紹介。「日立グループはトップの強力なリーダーシップのもと、デジタルで社会課題を解決する社会イノベーション事業でグローバルリーダーになるという目標を掲げている」と語る迫田氏は、DXを実現していくためのポイントを示唆した。

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株式会社日立アカデミー 代表取締役社長 迫田雷蔵氏

「まず日立グループが取り組んだのはDXのフェーズの分解。DXには、今までにない新たな産業・ビジネスモデルをゼロから生み出す『ビジネスモデルイノベーション』、既存ビジネスモデルを変革することで顧客価値を向上させる『プロダクトイノベーション』、サプライチェーンの再構築など既存ビジネスにおけるプロセスを改革する『プロセスイノベーション』、そして、各プロセスの効率を向上させる『業務改善』の各フェーズがあります。私が見る限り、それらが一緒くたに議論されているような気がしています。フェーズを分解することで、人財育成の対象や方針がはっきりしてくるのです」

日立グループが考えるDXのフェーズの図
日立グループが考えるDXのフェーズ

日立グループでは、フェーズの整理に基づき、DX推進のための人財像も明確に定義。本質的な課題を発見し、解決策の策定・合意形成・施策評価などを牽引する「デザインシンカー」、AIや数理統計などを駆使しデータを利活用する「データサイエンティスト」、サイバー・フィジカルの両面で企画から運用まで推進・支援する「セキュリティスペシャリスト」、デジタル技術を活用したシステムを設計・実装・運用する「エンジニア」、そしてOT(制御・運用技術)や業務の知識を持ち、現場へのソリューションの適用を推進・支援する「ドメインエキスパート」など、多様な人財の育成を進めているという。

「世の中では、データサイエンティストやセキュリティスペシャリストなど、いわゆる高度デジタル人財にのみフォーカスが当たっています。しかし同時に、課題を発見・定義するドメインエキスパートも相当数必要であり、企業のやりたいことを実装するエンジニアも欠かせません。各人財がトータルで力を発揮してこそ、企業のDXを進める推進力になります」(迫田氏)

日立グループではまた、「従来の事業領域においてもデジタル活用力を強化すべきだと考え、DX推進に注力している」と迫田氏。2019年度にはDX研修体制を整備・拡充し、100講座を用意したという。また2020年度にはケイパビリティのレベル別研修プログラムを開発・提供し、DX関連のリカレント教育を強化している。高度デジタル人財を育成するだけでは不十分であり、全社的にアップスキリングの裾野を広げることが重要というのがその趣旨だ。

個人も、企業も、政府も、誰もが責任を果たすべき課題

セッション終盤に再び登壇したPwCのブレア・シェパードは、瀧島氏、迫田氏の事例紹介や知見の共有を受け、「データからだけでは見えない、日本社会および企業の動きに非常に勇気づけられた」と振り返った。続けて個人のアップスキリングに話題を移し、若者世代と中高年のそれぞれにとって適切なアップスキリングの在り方について語った。

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PwC グローバル 戦略・リーダーシップ開発リーダー ブレア・シェパード

「将来的にコンピューターは自らプログラミングできるようになるでしょうし、研究室で行われている多くの研究も自動化していくでしょう。そう考えると、現在、社会がSTEM(科学、技術、工学、数学)を重視しすぎていて、政治学、社会学、心理学といった人文分野を軽視する傾向にあることが危惧されます。それは結果として、テクノロジーで何をするのかに対する知見が乏しい集団を生み出し、社会にとってネガティブな結果を生み出しかねません。若い人たちには、バランスの取れた“tech-savvy(技術に精通した)ヒューマニスト”を目指すようアドバイスしたいですね」(シェパード)

また中高年世代には、今持っているスキルが仕事につながらなくなったときには、そのスキルをレベルアップさせるだけでなく、全く違う分野に飛び込んで挑戦するという選択肢もある、と提案。そうした挑戦には大きな楽しみも伴うはずだと勇気づけた。

これに対し、木村は「若い世代とともに新しいことを学び続けるのは楽しく前向きなこと」と自身の経験を振り返った上で、「とはいえ、やはりアップスキリングは個人だけの問題ではなく、企業も政府も、誰もがそれぞれの責任として取り組まなければならない大きな課題」と指摘。企業にとっては、この課題に真摯に向き合うことがステークホルダーからの信頼の構築につながると、その重要性を改めて強調した。

シェパードもこれに賛同し、「アップスキリングに取り組まなければ、企業も、国も、個人も重要性を失ってしまいます。『取り組まない』ことの危険性は極めて大きい」と警鐘を鳴らした。

最後に木村は、「企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。そうした中でも、社会の課題をしっかりと見据え、責任感をもってそれに取り組んでいけば、信頼の構築とビジネスの成功につながるはずです」とセッションを締めくくった。

新たな世界。新たなスキル。Society5.0実現に向けたAIと人の協働の在り方を探る
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瀧島 勇樹 氏Yuki Takishima

経済産業省 商務情報政策局
情報技術利用促進課長

1978年神奈川県生まれ。2001年東京大学法学部卒後、経済産業省入省。2008年ハーバード大学公共政策学修士卒。インドなど新興国へのシステム・インフラ輸出政策の立案・実施、中小企業金融政策、サイバーセキュリティ政策に従事。2018年から大臣官房会計課政策企画委員として、予算要求のとりまとめ、経産省のDXを推進。2019年、商務情報政策局企画官に就任し、「21世紀の『公共』の設計図 ちいさくて大きいガバメントのつくりかた」の提言を、G20デジタル大臣会合における「Data Free Flow with Trust」「Governance Innovation」などのコンセプトをとりまとめる。2019年7月より現職。

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迫田 雷蔵 氏Raizo Sakota

株式会社日立アカデミー
代表取締役社長

1983年、日立製作所入社。一貫して人事・総務関係の業務に携わる。電力、デジタルメディア、情報部門の人事業務を担当後、2000年から本社にて処遇制度改革を推進。2005~09年、米国に本社があるHitachi Data SystemsでHR部門Vice Presidentを務める。その後、本社グローバルタレントマネジメント部長(2012年~)、中国・アジア人財本部長(2014年~)、人事勤労本部長(2016年~)等を経て、2017年4月より日立総合経営研修所取締役社長。2019年4月に日立アカデミーが設立され、初代社長に就任。

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木村 浩一郎Koichiro Kimura

PwC Japan グループ代表

1963年生まれ。1986年青山監査法人に入所し、プライスウォーターハウス米国法人シカゴ事務所への出向を経て、2000年には中央青山監査法人の代表社員に就任。2016年7月よりPwC Japanグループ代表、2019年7月よりPwCアジアパシフィック バイスチェアマンも務める。

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ブレア・シェパードBlair Sheppard

PwC Global Leader, Strategy and Leadership Development

2012年2月より、PwCの戦略およびリーダーシップ開発のグローバルリーダーを務め、PwCネットワークにおける戦略、リーダーシップ、カルチャーの取り組みをリード。リーダーシップ、企業戦略、組織デザイン等の領域で100社以上の企業や政府にアドバイスを提供した経験を有し、50以上の書籍や記事を執筆。デューク大学フュークア・スクール・オブ・ビジネスの名誉教授、名誉学長でもある。

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